ブラック・ミラー

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英国発「少し便利になったイヤな近未来」を皮肉に描く異色オムニバス 『ブラック・ミラー』

日常をベースにしながらもどこか異世界的だったり奇妙な出来事が起こったりする『世にも奇妙な物語』、または懐かしの海外ドラマ『アメージング・ストーリー』、あるいはまさしく「すこし・ふしぎ=SF」な『藤子不二雄F短篇集』好きの方、こんにちは。

 2016.8.29

そして『藤子不二雄F短篇集』の中でもハッピーエンドではなく、かといってとんちの効いたブラックユーモアでもなく、皮肉で後味が悪くていつまでもモヤモヤザワザワした読後感が残る作品が特に好きだったという方、いらっしゃいませ。
イギリス発『ブラック・ミラー』が、まさしくそんな後味の悪いアイロニーだらけのすこしふしぎドラマをお届けします。
 
Netflixオリジナルドラマとして、3話編成で2シーズン、そしてクリスマススペシャルとして一時間の特別編を製作している『ブラック・ミラー』。
一話ごとに主人公も異なるオムニバスで、舞台はいずれも近未来。ファッションはさほど現代と変わらないし、相変わらずスマートフォンやSNSも存在している。だけどそれらの機能が奇妙な発展を遂げていたり、一部が急激に進化したり。または、一部の文化だけを残し、その他の住環境や世界観がすべて激変してしまった異世界もある。
 
たとえばシーズン1Episode2の『1500万メリット』では、人間が自転車を漕ぐことで電力を生み出すという、まったく原始的なエネルギー製造を行っている。だが、その自転車を漕いでいる人々は立方体の箱のような部屋で生活し、窓のない部屋には絶えずテレビ番組やゲーム画面のような映像が流れ、太陽も自然もバーチャルアニメでしか見ることが出来ない。
毎日自転車を漕ぎ、その運動量で稼いだポイントで食事や生活用具を購入して生きる囚人のような生活。箱形の部屋へ閉じ込められた人々が外に出られる方法はひとつだけ、それは、オーディション形式のアイドル発掘リアリティショーでデビューすること…。
 
このリアリティショーは、イギリス発祥のオーディション番組でアメリカでも人気を博した『アメリカン・アイドル』のひな形となった『Xファクター』をモデルにしているのは、そのパロディ感満載の描き方ですぐにわかる。
でも、「優れた人間を選出する」という番組の概念のみ残し、歪んだカタチに変化した差別的な世界は想像以上にグロテスクだ。ドラマの序盤、SFチックなシチュエーションにワクワクしていた気持ちは急速に後悔へ向かい、ウエッ・・・という気持ち悪さに変わる。
 
そう、『ブラック・ミラー』は、資本主義的な思考で文明が進化し、どんどん便利になるがゆえに肥大する「歪み」を、異色SFとして、ラブストーリー、サスペンス、パニックホラー、政治ドラマと様々なテイストで描いていくのです。
 
キャストには、同じくイギリスの人気ドラマ「ダウントン・アビー」のレギュラーキャストであるジェシカ・ブラウン・フィンドレイやアレン・リーチがメインやカメオで出演しているのも、それまで19世紀の貴族の姿でしか観たことがなかった英ドラマビギナーの私としては嬉しかったり。
特別編のクリスマススペシャルは『マッドメン』のジョン・ハムがメインで出演してます。
 
1シーズン10話20話当たり前の海外ドラマにあって、2シーズン+1話の現時点でまだ7話しかない『ブラック・ミラー』。
 
私のように一日何話もむさぼるようにイッキ見してしまうタイプの人間にはアッという間に終わってしまって物足りないと思うかもしれません。でも全話を貫く独特の静けさがインディーズムービーのような味わいを出しているのと、一話ずつしっかりザワザワ不快になれて後を引くので、あまり急がず楽しめると思いますよ。
中には星誠一の短編小説で時々1ページで終わっちゃうタイプのお話みたいに、「え?そゆこと?」って感じで宇宙に放たれる終わり方みたいな話もありますけど。
 
 
※Netflixにて配信中

作品データ

製作年:2011~

製作国:イギリス

原題:Black Mirror