ハウス・オブ・カード 野望の階段
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ドラッグ、グループセックス、アルツハイマー、失業問題、テロリズムなど、刺激的なフックがてんこ盛りだが、このドラマには目の肥えた映画ファンの要求に応えてなお、おつりがくるおもしろさがある。
描かれるのは、「パートナーシップ」。
アメリカの大統領への道を上り詰め死守するために、ケヴィン・スペイシー演じる主人公フランクは数々のパートナーシップを結んでは壊し、結んでは壊しを繰り返す。
首席補佐官と、下院議員と、副大統領と、ジャーナリストと、ロシア大統領と…。
そこには、屈辱や策略、裏切り、性欲、死までもが絡んでくる。
そんななか注目すべきは、ロビン・ライト演じる妻クレアとのパートナーシップの変遷だ。
時に寄り添い、時に欺き、そして時に愛の形を模索する。
男の成り上がり物語のように見えて、女性も重要なファクターとして機能しているドラマなのだ。
たとえば、こんな描き方。
女性の更年期。これが、幾度となく印象的な「語らぬセリフ」として機能する。
冷蔵庫の前でホットフラッシュの症状をやりすごすクレアの姿。
そんな彼女を、いたわり、従わせ、突き放し、そして、すがるフランク。
常にブレない野望を持つフランクとは対照的に、クレアは女性であることと対峙しながら、「自分が本当に望んでいるものは何?」と問い続け、探り続け、「変化」してゆく。
そして2人のパートナーシップの在り方も、変化する。
変化し続けるからこそ、「次はどうなる!?」という視聴者の期待は高まるのだ。
さらに、このドラマのすごいところは、視聴者の期待とともに、キャストやスタッフのモチベーションも、回を追うごとに上がってゆくことだ。
ロビン・ライトも、その一人。
キャストのみならず、製作総指揮にも名前を連ねる彼女は監督も務めている。その回数は終盤に近づくにつれ増え、7回を数える。
ドラマの集約に向かって、その着地に「衝撃を超える説得力」をいかに持たせるかに作り手の熱が注がれてゆく。
発信者と視聴者が高めあうドラマ。
出会っておいて損はない。
「ハウス・オブ・カード 野望の階段」予告編
【おまけ:スペアリブの誘惑と機能】
本作には、フランクがスペアリブを食べるシーンが何度か登場する。
ダウンタウンで生まれ育った彼の出自とともに描かれ、「野望のルーツ」の象徴として重要な機能を果たす「おいしい奴」。
「あのスペアリブ、食べてみたい」と思った視聴者は多いはず。
少なくとも私は、そうだった。近所の店で食したそれは、野望の味がした(笑)。
内容・あらすじ
野心家の民主党下院院内幹事であるフランシス”フランク”・アンダーウッド。国務長官への任命を約束に、ウォーカー大統領候補を応援していたが、裏切られる。この復讐を皮切りに、妻クレアとともに大統領の席を狙う闘いが始まる…。