パブロ・エスコバル - 悪魔に守られた男 エピソード4

村山章の《今日のエスコバル》

第4回:麻薬王、パパになる

悪名高き“史上最悪の麻薬王”パブロ・エスコバル。『ナルコス』『エスコバル/楽園の掟』など映像作品でもひっぱりだこだが、母国コロンビアがなんと全74話もあるドラマシリーズを作っていた! しかし1日1話ペースでふた月半、週一だったら1年半かかる大ボリュームを一体誰が観るのというのか? オレだ!総尺53時間9分コンプリートへのチャレンジを逐次報告します!

 2016.9.08

前回(第三話)のレポートから早くも10日以上が経ち、その間に同じパブロ・エスコバルの伝記ドラマ『ナルコス』のシーズン2もリリースされてしまった! 『ナルコス』シーズン2はエスコバル最後の15ヵ月間を10話かけて描こうという試みで、早く観たくてしょうがないが、自ら言い出したこの連載も大切にしなくてはならぬ。こちらは麻薬王の死まであと71話。
 
【第四話:ジープ、炎上】
 
第三話のラストで若妻のパトリシアを独房に閉じ込めて(避難させて)、スタコラと刑務所を逃げ出したエスコバル。ママコバルに「明日刑務所に帰りなさい!」と怒られるが、ママには頭のあがらないエスコバルが珍しく「まだやることがある」とはねつける。やることっていうのは自分を有罪にした女性判事への報復で、兄のぺルーチェに命じて判事が買ったばかりの中古車を盗むというもの。「命は車より大切だろう?」と脅すのはいいが、自分でやらないなら刑務所から指示をするだけでよかったのでは。
 
ともかく判事をビビらせたので自主的に出頭して刑務所に舞い戻る。その間にぺルーチェは贈賄の才を発揮して、パブロ釈放に向けて根回し。ぺルーチェはまだ町の自転車屋なんだが、意外なところで才能が花開いたよ。
 
首尾よく相棒で従兄弟のゴンサロともども出所したエスコバルは、面倒なヤツは消してしまえと白昼堂々、自分を有罪にした連中を殺して回る。背後からビニール袋をかぶせて窒息死させるなんてもはや暗殺者のスキル。相変わらず殺人には一切動揺を見せず、手で髪を撫でつけて去っていく。この仕草、どうやらエスコバルのトレードマークになっていく模様。
 
そこからまた時間が飛びますが、字幕が「その後」ってのはテキトーに過ぎますまいか。若妻だったパトリシアも身重になって出産三ヵ月前。おや、ついにパティも演者が変わっちまった。あの可愛かったパティをかえせ、ああ!
 
ここでエスコバルが卸すコカインを捌いていたモトーア兄弟(オチュア兄弟がモデル?)と衝突し、ゴンサロの発案で自分たちでコカインを密輸することに。売りつける先はアメリカ。二話で登場した裏社会の魔女グラシエラと手を組んで、いよいよ巨大な麻薬カルテルを立ち上げる。とりあえず輸送には飛行機が必要だからと出資者を募り、自分は一銭も出さずに大儲けを狙うエスコバル。「オレの出資は頭脳、アイデア、機転だ」とうそぶくエスコバルだが、おい、この計画はそもそもゴンサロのアイデアじゃなかったか。
 
あ、そんなこんなのうちに息子が生まれ、パパになって大喜びのエスコバル。そういえばママコバルに比べてパパコバルはいたのかいなかったか思い出せないくらい存在感がない。調子づいたエスコバルは豪邸を買い、地元の貧乏人に施しをバラまき始める。「エスコバルさん、叔父さんの手術費がありません」「そんなものは私が出してやろう、安心しなさい」とか言ってる姿はもはや完全に『ゴッドファーザー』である。
 
一方で警察もエスコバル逮捕のために、潜入捜査官を送り込むのだが、この顛末には思わず「あーーー!」と叫んでしまった。タクシー運転手のフリをして首尾よくエスコバルに気に入られママコバルのお手伝い係になるのだが、上司からは「ママの秘密探ってんじゃねえよ!」「子供が生まれたとかどーでもいいよ!」と怒られる毎日。しまいには「もうクビだ!」と言われてしまい「一生懸命やってるのに!」と大ショック。
 
ちょうどその頃エスコバル家ではクリスマスパーティで大盛り上がり。兄貴のぺルーチェは弟のジェルソンにピカピカの自転車をプレゼントするも、パブロとゴンサロが新品のジープを贈ったものだからぺルーチェの立つ瀬がない。こういう地味な不満が蓄積していつか爆発するのは世の常だが、今回不満を爆発させたのは例の潜入捜査官の方でした!
 
ジェルソンが早速ガールフレンドとドライブして浮かれていると、突然キレた捜査官が現れてジェルソンを脅しジープをカージャック。故意なのか酔っぱらっていたのか、ジェルソンたちを乗せたまま崖からダイブしちまったよ! 転落して炎上するジープ! なんだこの流れ! ジェルソンの彼女も可愛かったのに若い娘さんたちとは次々とお別れなのか。いや、ジェルソン君も彼女も100%ただのとばっちりじゃないですか。こんなキレやすい潜入捜査官、クビにされても仕方ねえよバカ! 衝撃の展開にて「つづく」。
 
 
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※演者のオッサン、オバサン化が進む中でオアシスのような存在だった若きパトリシア役、アイリーン・モレノ嬢のセクシー写真でお別れ。
 
 
 
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http://www.shortcuts.site/column/todaysescobar

作品データ

製作年:2012

製作国:コロンビア

言語:スペイン語

原題:Pablo Escobar: El Patrón del Mal