アマンダ・ノックス

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『天使が消えた街』を観た人へ。そして、これから観る人へ。『アマンダ・ノックス』

イタリアに留学中のイギリス人女性が殺害された「ペルージャ・イギリス人留学生殺害事件」(2007年)。被害者の友人であるアメリカ人留学生アマンダ・ノックスが、犯人に仕立て上げられる。彼女の冤罪が証明されるまでを描いたドキュメンタリー。事件がなかなか鎮火しないなか、監督マイケル・ウィンターボトムはこの事件をモチーフに劇映画『天使が消えた街』を放った。

 2016.10.10

このドキュメンタリーを観て、マイケル・ウィンターボトム監督の『天使が消えた街』を観直すと、初見では飲み込めなかったことが見えてきた。

 

『天使が消えた街』はドキュメンタリーではなく、「この事件を映画化しようとする中年男性」を主人公にした劇映画だ。
今回紹介するドキュメンタリーでは容疑をかけられたアマンダ・ノックス本人にスポットを当て、警察の捜査のずさんさやマスコミの対応を介しながら事件を紐解いてゆく。
いっぽう、『天使が消えた街』では人気女優と離婚して4年、未だ立ち直れない中年映画監督トーマスのもがきが軸となる。
トーマスがフィーチャーする「天使」は3人。被害者メレディス・カーチャー(劇中ではエリザベス)、容疑者アマンダ・ノックス(劇中ではジェシカ)、そして事件には無関係の実在しない留学生メラニー。
彼が、この3天使にどう惹かれ、導かれてゆくのかを飲み込むためには、やはり「背景である事件」を知らなければ消化不良となる。

 

そこで、このドキュメンタリー。

 

事件当時のリアルな映像や、本人たちへのインタビューを交えながら伝えられる事件の顛末は、『天使が消えた街』で詳しく語られなかった「接続詞」を補ってくれる。
浮きっぱなしになっていたいくつかの「なぜ?」が、埋められてゆく。

 

「犯人が誰かは問題ではない」と言い放ついっぽうで、執拗に真犯人を求めてゆくトーマス。
その背景となった「本当の事件」を知って観ると、彼の衝動の理由をとおして、この事件がさまざまな人たちにさまざまな影響を与えていたことがわかってくる。

 

真実へと近づくドキュメンタリーと、その事件から生まれたフィクション。
その2つの関係が、意図せずして呼応する。

 

おもしろい経験ができた。

 

<予告編>

作品データ

製作年:2016年

製作国:デンマーク、アメリカ

原題:Amanda Knox

監督:ロブ・ブラックハースト、ブライアン・マッギン

出演:アマンダ・ノックス ほか