私の主宰する某劇団K〇〇〇T〇で、大昔にこんな事があった。

当時所属していた堀北真希似の女子劇団員Yちゃんに初めて届いたファンレター。

「良かったじゃん！」手紙を差し出す彼女に笑いかけるも、なぜか本人は超渋い顔。

「これちょっと、読んでみてもらえますか･･･？」

あなたのファンですと始まった手紙には、奇妙なお願いごとが添えてあった。

 

「良かったらお返事ください。出来ればその際、”くさやの干物を嗅いでくせえぇぇ！”というあなたの顔写真を送ってください」

・・・え。

その後も何通かファンレターは届いた。

 

「Yちゃんはイラストを描くのが得意だそうですね。写真を送るのが無理ならイラストでも良いので、”靴下の臭いを嗅いでくせえぇぇ！！”というあなたの自画像を描いてください」

そこにはご丁寧に、Yちゃんらしき女の子が靴下を掲げ「くせえぇぇっ！」と叫んでいる参考のイラストまで添えてある。

「えぇぇっ」の「ぇ」の数に込められた熱量。よほど切望してるとみた。

世の中には変わったフェチの人がいる。

怖がるYちゃんには気の毒だったが、私はちょっぴり面白かった。

 

「くせえぇぇ！」と顔をしかめるのがたまらんという奇特な趣味同様、「コチョコチョコチョオォォ！」で笑いをこらえてる姿にも熱いオーディエンスがいるのだなあと見始めた『くすぐり』。確かに一部、そういうニーズはあるらしい。

だがこれはそんなのんきなドキュメンタリーではなかった･･･！

 

超有名人から巷の変人まで幅広く取材し、世の中の奇妙な出来事を記事にしてきたニュージーランドのエンタメ記者デイビッドは、ネットで変なスポーツ大会の動画を見つけた。

その名も「くすぐり我慢大会」！

マットの上に縛り付けられた屈強そうな若い男子を、同じくマッチョな男たち数人がこぞってコチョコチョ。ひたすらくすぐり、ひたすら我慢する。

そ・れ・だ・け！なんだこれ！

なのに選手は出場するだけでLAに無料で滞在でき、更に1,500ドルももらえるという。

 

デイビッドは早速ネタにしようとFacebookを通じて大会を主催するジェシー・オブライエンという女性に取材を申し込んだ。

ところが・・・。

 

「同性愛者の記者（※デイビッドは同性愛者らしい）には取材させません！これはあくまで異性愛者のためのスポーツなので！このホモ野郎！」

いきなりものすごい攻撃的なメールが何通にも渡って返ってきた！

ええっそうなの？デイビッドは驚いた。

「だってもろゲイ向けっぽいのに･･･」

これってその手のフェチ動画じゃないの？

 

かえって興味をそそられたデイビッドがその顛末をブログにすると記事は大人気。反響に応えてドキュメンタリー制作を決めると、今度はドキュメンタリー制作の中止を求め、ジェーン側が米国で訴訟を起こすといってきた！

突如やってきたジェーンの代理人は、

「悪いことは言わないから近づくな」「溶鉱炉に頭を突っ込みたいなら好きにしろ」

とあからさまな脅迫。

だがその代理人たちですら誰も会ったことのないジェーンという謎の富裕層企業者。

米国開催の大会なのに会社の所在地はなぜかドイツ。

取材しようにもかつての大会参加者たちは怯えて固く口を閉ざし･･･。

 

調べるほどに怪しさを増す「くすぐり大会」主催の企業。

脅しに屈しまいと調査を続けるうちに、デイビッドはこの会社に貶められた若者たちの存在を知り、やがて大会の裏に潜む恐ろしい闇の真相に近づいていく。

 

ライトなノリでスタートする冒頭から一転、訴訟騒ぎ以降はまるで別の作品を観ているかのようにあれよあれよとダークに展開。思わず身の毛がよだつような企業の実体があぶり出される。

これって結構なサイコスリラーじゃない！？ くすぐりフェチはどこいった？

 

この先のネタバレは避けますが、ShortCutsライターの皆さんがこの記事を書くにあたって「実名で書くのが怖い」といっていた意味。見たらわかる、といわれました。

ええ、わかりました・・・。

だから私、思わず「某劇団」とか書いちゃったもんね！劇団名意味なく伏せ字にしちゃったもんね！すぐバレるけど！

いやああ！ジェーン、私を見つけないで！訴えないで！

くさやがくせえぇ！の人も、どうかうちの元劇団員を見つけないでえ！！

 

※Netflixで独占配信中。

 

【予告編】