フリーバッグ
ShortCuts編集部
〇参加者
桑原裕子 :劇作家・女優・演出家。劇団KAKUTAを主宰。新妻。
石川あさみ:シナリオライター。独身。
ShortCuts編集部:独身。
《フリーバッグはビッチというより軽いクズ》
ShortCuts編集部 今日はお集まりいただきありがとうございます。本日の進行を務めます。実名で掲載させていただくかどうかは後で決めることにして、ここでは「出せる、出せない」のブレーキを外してお話できればと思います。
桑原 改めまして桑原裕子と申します。KAKUTAという劇団で脚本を描いたり役者をしたりしてます。ブレーキ外す、了解しました!
石川 石川あさみと申します。シナリオライターをしています。ブレーキはないです!
編集部 頼もしい(笑)。まず桑原さんはShortCutsで「フリーバッグ」のレビューを書いていただていますが、このドラマのどこの惹かれたのでしょう?
桑原 私、いわゆる「セックス・アンド・ザ・シティ」系の女の本音ドラマみたいな奴はいつもこっそりチェックしてしまうんですけれども、最初のシーンで一人語りが始まった時は「よくあるな、このタイプ」って思ったんですね。ただ冒頭シーンのオチで「その日わたしは一日考える・・・」みたいな想いにふけた流れから「私の尻の穴って大きいの?」という最低な言葉が引き出された瞬間から、もう大好きになりました。
編集部 冒頭3分くらいでしたよね(笑)。
桑原 そう! コトに及んでる最中からやたら喋るんで「よくある(一人語り)タイプにしちゃ、やり過ぎ」という点で既に可笑しかったんですけど(笑)。
編集部 ビッチの匂いがプンプンしますよね。石川さんはビッチが好物とのことですが、フリーバッグに共感する点はありますか?
石川 私も桑原さんと同じように最初は「はいはい、これね」的な感じで観ていまして。実は一話ではそんなに楽しめず、二話以降を見るのに時間がかかったくらいなんです。石川の“ビッチ・レーダー”には彼女はひっかからなくて、「そんなにビッチですか?」からがスタートだったんですね。
編集部 “ビッチ・レーダー”(笑)。
石川 あと彼女程度でビッチにカテゴライズしてしまうと、私、石川もビッチになるじゃねえか、ってことでもあるんですが。共感するというよりは「ああ、これ、やったわ」的な。
桑原 ビッチというより軽いクズですよね。私も身に覚えがある感じがしました(笑)
石川 そう。ビッチぶってるけどどっちかっていうと「アンタ、クズだよ」って教えてあげたい感じですよね。
桑原 自分も通った道だから、容赦ない気分になりますよね。
編集部 お2人とも通った道なんですね。ということは同様の経験をされたことが?
石川 えっ?
編集部 ここはブレーキは外していただいて(笑)。例えば私はオバマで自慰するシーンがツボだったんですが。
桑原 ああ、尻の穴をって意味じゃないんですね(笑)。
石川 「俺の尻の穴を」って頼まれたことはありますが、自分の尻はまだ経験ないです。
桑原 あはははは!!
《オバマで自慰は全然アリ》
石川 でも、オバマで自慰は全然アリだと思いました。恋人に怒られる理由がわからない。
編集部 ありですか! NHKのアナウンサーが好きでニュースが頭に入ってこない私も素質ありでしょうか?
桑原 私も、まじめなニュースを読むのを見ながら安住さんはどんなセックスをするのだろうとかぼんやり考えてたりします。
編集部・石川 やっぱり!
桑原 ちょっと話が逸れるかもなんですが、ウチの劇団にこの前出演してくれた若い女の子がいて。とても一生懸命に稽古を頑張ってくれる娘なんですけれども、「稽古の時、何を考えてるの?」って聞いてみたら、出演者の全員が、一人一人、どんなセックスをするのか考えてました、ってまじめに言っていました。
石川 あー、その気持ちわかる。でも、フリーバッグがオバマで自慰するのは想像で抜いてる感じではない気もしていて。意味のない映像をぼんやり見つつでもやれますよね。オバマはそっちの意味合いなのかと思ってました。
桑原 思考が宇宙に飛んでいく感じ……。いや、全然わかります(笑)。
石川 よかった(笑)。こう、エッチな気分とやらにならないとできないことだと思っているのだとしたら大間違いだと、あの出て行ったフリーバッグの彼氏に伝えてあげたい。だからオバマに欲情してたわけじゃないんだよ、って。いや、実際には欲情してたのかもしんないんですけども。
桑原 女の果てしない性欲に男性があきれ果てる、みたいな瞬間って、経験したことあります?
石川 アレがそうだとは思いたくはないけど……みたいな瞬間はあります。
編集部 フリーバッグも彼氏の横で自慰でフィニッシュとかやってましたね。
石川 彼氏の横で自慰でフィニッシュはさすがにできないので、あのシーンはツワモノだな、と思いました。私は場所を移すくらいのやさしさは持ち合わせているので。
桑原 やさしさだ、それはやさしさだ(笑)。自分が求める時は当たり前みたいな感じがあるのに、こちらが求めると「お前はもう、ナンダ」みたいなお叱りモードになる人はいますよね。
石川 いますね! 許せないです! お前の惚れた女がしたいって言ってんだから、黙ってすりゃいいんだ、と思います。
編集部 同じ日に別の人と関係をもつとか、ありますか? 私は残念ながら……。
石川 あったかなあ。あったかも。
桑原 おお、ありましたか!
石川 そんなに特別視してなかったので。
桑原 私はね、そこんとこできないんですよ
石川 おっと。
編集部 あ、差が開きましたね。
桑原 初体験は高校生だったんですけども、その時にひとつの基準が出来たんです。大好きな男の子と、はて、コトに及ぶことになりそうだという時ににですね、彼の全裸を想像したんですね。そこで「ウン! ヨシ!」って思えたらセックスできる人。逆に股間の辺りがモヤモヤ~としたまま想像が追っつかない人は、できない人(笑)。
編集部 モザイク?(笑)
《ちんちんは面白いと負け》
桑原 あのね、へんなこと言いますけどいいですか?
石川 もちろん。
桑原 ちんちんって、間が抜けてないですか?
編集部 そのココロは?
桑原 ゲイの友人が、すごい有名なハリウッドスターたちの全裸写真をゾロッて送ってくれたことがあったんですけれども、こんなにかっこいい人も、こんな面白いものが付いてるんだなあと思ってしまってですね。
石川 あー。
桑原 ちんちんが基本面白く見えてしまうので「セクシー!」って見える人ってだいぶ限定されるんです。自分の中で。
石川 そこができるかできないかのポイントになるんですね、桑原さんの。
桑原 そうなんです。面白いと負け。
石川 わかる!
編集部 わからない!
桑原 あはははは。
石川 面白いと、もう、全部が全部、面白くなっちゃう。
桑原 そうなんです!
石川 我に返ったら負けですよね。
桑原 つまり、私が今までそういうことあった人は面白くないちんちんってことになります。
石川 それって本当にフォルムの問題なのか、その人の他の部分に左右される、印象の問題なのかが気になります。
桑原 やっぱりフォルムの問題は結果でしかなくて、印象というか精神論なんでしょうね。だから、フリーバッグが自分のカフェでどの客ともやりたいくらいの勢いになってたりしますけど、あのスピード感は私にはないです(笑)。
石川 ありゃ、あたしにもないです。なので彼女はツワモノだなって思えるんです。ただ彼女って引きが弱いのか、クソな男ばっか当てるじゃないですか。
桑原 はいはい(笑)。
石川 それがもう切なくて。
桑原 アレは多分、焦るからですよね。
編集部 自分の価値が身体にしかないと思い込んでいる?
石川 そのあたりは劇中で当人もそう語ってますけど、性欲の強い女性を描く時のよくあるエクスキューズみたいな感じですよね。石川としては「はいはい」としかならない。
桑原 はいはい(笑)。
《狩っても狩っても満たされない女》
※ここからネタバレあります。
編集部 クソといえば、親友の彼氏と関係を持つって理解の範疇ですか?
石川 親友の旦那だとしても理解の範疇内です。クソだとは思うけど。
編集部 おお!
石川 あー、でも、親友の定義にもよるな。本当に大事な友達の相手ならやんないかも。天秤にはかけるけど。
桑原 結婚してる人とか友達の恋人とか、いわゆるタブーな相手でも「この人には自分の魅力が通用するかしらん?」みたいなノリで、自分の価値を試すみたいな心理があるというのは、わからんでもないです。
石川 あ、それ、逆にわかんない。あとフリーバッグの親友のブー(ジェニー・レインズフォード)の場合は、あの彼氏とはまだ付き合い始めっぽかったから許容範囲。なので、そこはちょっぴりクソくらいの評価でいいかなと思ってました。ちょっぴりのクソのせいで悲劇が起きたという印象。あんなクソ、全然ちょっぴりなのに……。
編集部 こえぇ!
桑原 さっき自分の身体にしか価値がないって話がありましたけど、ブーの彼氏を寝取ったときのフリーバッグは、単純な性欲だけでなく、そういう自分の価値みたいな物を試したい感覚があったんじゃないかなと思ったんですね。いわゆる狩猟本能なんだけれども「こいつ釣れるかな? 釣れたー!」みたいな。
編集部 なるほど。
石川 狩猟本能の割には、釣りやすそうな男に行ってるな、ってイメージで……って、ああ、そうか、だから結局、狩っても狩っても満たされない的なことなのか。
桑原 そうそう、それこそがフリーバッグの自信のなさ。
編集部 桑原さんがレビューで、「フリーバッグ」と違って「「SATC」のキャリーが画面に語り掛けるスタイルを続けなかったのは友だちがいるからだ」と書いていらして、すごく納得しました。
桑原 はい。「SATC」は「独身、性に奔放=自由!」みたいな感じでしたけど、フリーバッグは「独身、性に奔放=孤独」って感じがするんですよね
編集部 まさに。
石川 フリーバックは奔放、って感じでもないのかな。やけっぱちな印象(笑)。
桑原 なんか飢餓感がありますよね。
石川 物も盗むしね。
編集部 お2人ともフリーバッグに親近感あるんですね(笑)。
《「SATC」「Girls」を超える赤裸々の深度》
桑原 Huluでも配信されてる「Girls」って同じ系統のドラマがあるんですが。同じ系統って言っても全然似てはいないんですけど、ただ「奔放な女」で乱暴にくくるなら、ある意味共通する点はあって。
石川 観なくちゃ(笑)。
桑原 「Girls」の方は「4人の主人公が織り成すオシャレでポップでちょっとエッチなNY女子のリアルライフ!」みたいな触れ込みになってるんですけど。
石川 ほほう。
桑原 よく「SATC」と比較されていて、それこそ「よりリアルに赤裸々に!」が売りなんですが、「フリーバッグ」の本音度を見たら質は違えどまだ上がいたか、みたいな気分になりました。
編集部 リアルさの深度。いや、赤裸々の深度か。私は最初、フリーバッグは自分と最も遠い存在だと思ってたんですが、フリーバッグの抱えている闇を知れば知るほど他人事じゃないと思えてくるのがこのドラマの巧妙なところかと思いました。笑い飛ばしたりドン引きしながらも、時々「チクッ」と心を刺されるような感覚がありました。
桑原 どんなところで他人事じゃないと感じました?
編集部 自分自身の価値を確認しようとすればするほど、孤独に陥るとか……。劇中に出てくる「女に支配されることに我慢できない男たち」が参加する啓蒙セミナーも気になりました。
石川 オッサンたちが集まってすごい怒ってるセミナー(笑)。
桑原 あれってあるのかなあ、本当に。
石川 ありそうですよね。
編集部 働いていると感じることありませんか?
石川 女に支配されたくない男?
編集部 それです。
桑原 私は演劇界に身を置いてますけども、昔はほんと多かったなと思います。私は演出もやるんですけど、女の演出家にきつくダメ出しされるとムッとしちゃうみたいなのとか。
編集部・石川 あー。
桑原 演劇フェスティバルの授賞式で、一人一人演出家が挨拶していく時に「僕は桑原さん結構好みなんですよねー」とか言うわけですが、それは本音じゃない。お前なんか同等に相手してないという意味の挑発なわけです。
編集部 小せぇ。
石川 最近、同じことを年下のディレクターに言われました。死ねって思いますよね。「面白いもん作ってから言えや、クソが」ってなります。
編集部 「フリーバッグ」の融資関連で関係がごじれる銀行マンみたいに、弱みを見せたほうがうまくいくかもしんないですね。男性も女性もお互いに。
石川 あの銀行マン(ヒュー・デニス)になら見せてもいい!
桑原 見せてもいい!
編集部 髭の中年が好みとか?
桑原 寂しいおじさん萌えですね。
石川 ダメさがかわいい。
編集部 弱いところを見せられると攻めづらいですよね。
石川 あと、顔がいい。
編集部 やはり顔か。
《寂しいおじさんを守る会》
桑原 私、20代の頃は「寂しいおじさんを守る会」というのを一人で主宰してまして、様々な活動を一人で行っていました。
石川 素敵な名前の会!
編集部 いったいどんな活動を?
桑原 電車の中で、若い酔っぱらいの男たちに「どけよ」とか言われてるおじさんがいるとですね、私がその若い酔っぱらいの背負ってるリュックの中に、気づかれぬよう、ファンタを流し込んだりですね。
編集部・石川 (爆笑)
桑原 電車で酔いつぶれてるおじさんにマックのポテトをちょんとくわえさせてあげたり、そんな活動です。
編集部 その活動、続けてほしい! そうしたらあんなセミナーいらなくなるのに。
桑原 しなびたポテトを嬉しそうに咀嚼するおじさんが忘れられないです。
石川 それはもう善意からでもダメですよ。プレイだもん。完全にプレイだもん。
桑原 プレイかー。なんか、あたしも寂しかったのかもしれない(フリーバッグ風に)。
石川 寂しいおじさんを守るのは、ぜひライフワークにしてください。
桑原 もうね、自分もおじさんとそう年が変わらないんで優しくできるかどうか……。あ、「おじいさんを守る会」に移行すればいいのか。
編集部 それは普通に介護ですね。これからの社会ではニーズがありそうですね。
石川 金の匂いがするから私も入会したい。
桑原 ポテトのおじさんが、君の名前教えてって言うんですが、一秒もかからないうちに、「嘘で良いから!」って言うんです、その哀愁はチャリティでしか生まれません。
石川 いいシーンだなあ!
桑原 その日は「ミヨちゃん」で通しました。
石川 桑原さんはフリーバックじゃないんだってわかりました。与える側の人間です。しなびたポテトを(笑)。
《フリーバッグは、観客にも本音を隠す》
編集部 脚本も手掛ける主演のフィービー・ウォーラー=ブリッジは、もともとこのネタを一人芝居として展開していたそうですが、女優であり脚本家である桑原さんはフリーバッグを演じてみたいと思いますか?
桑原 演じたいです!! 「フリーバッグ」はほとんど前情報なく観たんですけれども、とにかくこの女優さんって内容や狙いを完璧に理解できてるなって感心してたんですよ。で、あとで脚本家でもあるとわかって納得しました。
編集部 ほー。
桑原 あの細かい目配せとか、リズムがほんとに細かくて見事だと思ったんですよ。やらされてる感がまるでない。
石川 確かに。そのおかげで、ちょっとリアルすぎて「ツライよツライよ」って思って見てたんですが……。
桑原 うんうん、わかります。面白いのが、あの一人語りの流れで、何でも素直に顔に出してるみたいに見えるけれど、後半に行くにつれては特に、カメラ目線を向けられているわれわれ観客側にも本音を隠してるんですよね
編集部 ほーーーーーーーーーーーーー!
石川 結構、黙りますよね、あの子。
桑原 そうそう。ほんとにきついことは、カメラ目線でも黙る。
石川 そのくらいになってからの方が、彼女を好きになれました。
桑原 うん、わかります。
石川 あれ、巧妙ですよね。それに合わせてまわりの人間の方がどんどんクソになってくんで、彼女のクソさなんてカワイイもんにも思えてきますよね。
桑原 はい。あの父ちゃんの新しい嫁(オリヴィア・コールマン)なんてクソ過ぎてサイコーですよね! ちょっと前までAmazonで配信してる「ナイトマネジャー」で見ていて、応援していた女優なだけに裏切られた気すらしました(笑)。
石川 あいつこそビッチ!
桑原 あと女友達にも「こっから先は言えない」境界線ってありますよね。私はフリーバッグのことをどうしようもない悪友みたいな感覚で見ていたので、「ああ、こっから先は隠すんだ、あんた、かわいい奴だな」みたいな感じになりました。
編集部 シーズン1は終わったような、続きがあるような最終回でしたが、2018年のシーズン2配信が決まったようです。脚本も手掛けられる石川さんは続きを書いてみたいと思いますか?
石川 これ、書ける気がまったくしないです……。
編集部 自分をさらけ出すようで?
石川 自分バージョンの「フリーバック」なら書けるんだろうけど、そもそも、それを書きたいかどうか、ってのもわからない。自分のクソなエピソードを引っ張り出し過ぎて友達がいなくなる気がするし(笑)。このドラマって、本気で誰かに見てほしくて、書かなきゃいられないような人が書くものな気がしたんですけどどうなんですかね。
桑原 書かなきゃいられないってのは、わかる気がしますね。
編集部 一応フィービー・ウォーラー=ブリッジ本人は自伝的じゃないとインタビューでは言ってますね。ただ、フリーバッグっていうひどいあだ名は本当に家族から付けられていたらしくて。
(※注:fleabag【名】ノミのたかった動物、薄汚い格好をした人、みすぼらしそうな人 〈米〉安宿、ぼろ下宿屋、みすぼらしい公共の建物)
桑原 ひどい。すがすがしいほどひどい。
石川 どうやったらそんなあだ名で呼んでもらえるのか、想像もつかない。
桑原 まあ、私も小学校の時のあだ名は「ハエ」でしたから、あまり言えませんけど。
編集部 え?
桑原 しつこい、うるさい、しぶといから「ハエ」。
石川 それ、自慢していいですよ。今後、絶対プロフィールに書くべき。
桑原 えー(笑)。
《フリーバッグをつなぎとめていた親友“ブー”の存在》
石川 私、ブーが好きで……って、子どもみたいな言い方になりましたが(笑)。あの娘を書ける作家ってことだけでもフィービー・ウォーラー=ブリッジの株が少し上がりました。
桑原 あー!
石川 さっきの「自伝かどうか」的なとこにも多少なるんですけど、かなり自覚的な作家さんなんだなって思いました。
編集部 自覚的な作家さんとは?
石川 計算しているな、というか。まあ、そりゃするんですけども、無自覚に垂れ流してる風な書き方をしてるのに、ちゃんと自覚的なんだな、と。すみません、説明にまったくなってねえな。
桑原 私もブー好きです。確かにブーみたいなキャラクターって今まであまり見たことがなかったかも知れないなあ。
石川 ですよね。本当にああいう子に会って書いてるのか、計算なのか知らないですけど、本当にフリーバックにぴったりな親友で上手いなあと思いながら見てました。
桑原 うんうん。フリーバッグってどうしようもない娘かも知れないけど、ブーの前では結構まともなんですよね。ダメな子同士だと、どっちかがしっかりするみたいな作用もあるのかも。でもブーにはフリーバッグにはない純真さがあるのがよいです。
石川 ブーの前のフリーバック、まともですよね。つなぎとめられてる感じ。
桑原 そうそう、まさに! つなぎ止めてる。
石川 ブーが彼氏なんて作らなければよかったのに。私、キャバ嬢やってた時代がありまして、そん時の友情を思い出すんですよね。クソは意外と至近距離にいるんだけど、クソがふたりいるとそんなにクソでもなくなって……って、やばい! 「やっぱ友だちっていいですね」みたいな結論に落ち着きそうになっちゃった。
桑原 あはは! わー、でもわかります
石川 でも桑原さんの考察にもつながりますね。「フリーバッグには友だちがいないから」って。
編集部 唯一の友達だったブー。
桑原 ブーを亡くしてこその暴走なんだな、というのが哀しいですね。
石川 しかも引き金を引いたのは自分っていう。
桑原 引き金を引いたのは自分で、一番苦しんでるのもソコなんだけど、結局泣き叫ぶ時には「私を誰も求めてくれない!」ってなるのがもう緩い地獄でしかない。
石川 そこもちゃんとクソでいいですよね。「私を誰も求めてくれない!」
桑原 そう。だから新たにそういう存在が現れるまで、迷走を続けると思う。
石川 今日いろいろ話してみて、もう一回観直したらフリーバックのこと、もっと愛せそうな気がしてきました。
桑原 わたしもです。
編集部 では、シーズン2ができた時には、ぜひまたよろしくお願いします!
※「フリーバッグ」シーズン1(全6話)はAmazonプライムビデオで独占配信中
《予告編》
《視聴リンク》
https://www.amazon.co.jp/dp/B01N6S4YBK/
《「フリーバッグ」レビュー》
◆愛すべきロクデナシ女フリーバッグ、ここに参上!:桑原裕子
◆英国直送、ドラマ史上稀に見るクズな女の泣き笑い:村山章