パブロ・エスコバル - 悪魔に守られた男 エピソード1
村山章の《今日のエスコバル》
自分がNETFLIXに入会したきっかけはコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルの伝記ドラマ『ナルコス』だった。早々に「エスコバル」で検索をかけてみたところ、『ナルコス』と並んで出てきたのが『パブロ・エスコバル – 悪魔に守られた男』だ。
最初はドキュメンタリーかと思ったが、ドキュメンタリーなら『パブロ-エスコバルが作り上げた時代』という別作品がラインナップされている。よくよく見たら『ナルコス』に先駆けて2012年にコロンビアで制作されたドラマシリーズらしい。最近では『エスコバル/楽園の掟』でベニチオ・デル・トロがエスコバルに扮し、今後はハビエル・バルデムやジョン・レグイザモも演じる予定らしい。エスコバルが治安部隊に射殺されて23年が経つが、こりゃ世界的にエスコバルの波が来てるんじゃないですか!
で、改めて『パブロ・エスコバル – 悪魔に守られた男』をチェックしたら全部で74話もある! さすがはエスコバルがブイブイ言わせ、最高裁判所を(比喩ではなく)炎上までさせたコロンビア。力の入りようが半端じゃない。きっと語るべきエピソードが腐るほどあるのだろう。
しかし待て。『ナルコス』なんて10話しかないファーストシーズンので44年の人生の43歳まで描いちまったぞ。それでも十分盛り沢山だったのに74話もかけてなにを描くのか。てか、エスコバルって今のオレより若くして死んでんのか。こっちは世界7番目の富豪どころか、町内7番目にも手が届かないってのに。よし、どれだけ濃厚な生涯だったのか全74話で勉強させていただきます!
前置きが長くなったが、まずは第一話「悪さをするなら徹底的にやりなさい!」(サブタイは勝手に付けた)をレポします。
【第一話:ママ以外に大切なもの】
物語は1993年12月2日から幕を開ける。逃亡中の白髪まじりでヒゲ面の中年男と、その居場所を特定しようと躍起になっている治安部隊。これはエスコバル最期の日だ。フラッシュバックするのはエスコバルが過去に犯してきた暗殺事件の数々。凶悪かつ強引なやり口でヘロイン帝国を築いた男の罪深さをアピールしたら、時代は一気に1959年へとさかのぼる。
パブロ・エスコバル少年、9歳。そりゃそうだ。エスコバルがどんな子供だったのかはこちらだって知りたいところ。74話もあるのだから悪の起源から描いてもらわなくては。ええと、ビビりでお兄ちゃんにイジメられて、そのお兄ちゃんから金を取ってテストの答案を盗み出して、テストの問題を変えられたら逆切れしてテストのボイコットを扇動……って、子供だな、セコいな、小物だな!
驚いたのが答案泥棒がバレた時の母親のお説教。「悪さをするなら捕まらずに徹底的にやりなさい! この世界では愚か者は上に立てない。戦う相手を選びなさい。捕まったら負けよ!」
「悪さをするなら」という前提はあるが、お母さんすごいよ、全部正論だよ。この教えを胸に刻んで、地元のワルガキどもを束ねるボスに成長していくのだろうと思ったら、一気に青年になった。子供時代短けえ。1話からどれだけ飛ばす気なのかこのドラマは。痩せたガキンチョはムチムチっとしたチンピラに早変わりし、タバコの横流しで小金を稼ぐ小悪党に。仲間に「お前はカネと女の話しかしない」と言われて「ママ以外に大切なのはそれだけだ」とうそぶくマザコンっぷり。ラテン男として完璧である。
そんなパブロが友達の妹をコマそうとして激怒されて、居直って気迫勝ちしてしまうのは本当にサイテーだが、「ムリを通して道理を引っ込ませる」やり口はママの教えからたどり着いたのかと思うと美人のママも業が深い。あ、そういえばパパの方はいい年こいて「宝探し」に入れ込んで周囲から笑われている困ったオジサンでした。
で、パブロの方は密輸業に首を突っ込んで、『ナルコス』一話に相当する検問エピソードも潜り抜け、裏社会のニューホープっぽくなったところでまた次回。いや、一話から飛ばしまくっている45分。面白くて本当によかった。この調子であと73話頼んだ。ではまた。
※スコップ担いで宝探し中のパパコバル。
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