【第二話：数年後】
　
さて、第二話は「数年後」から始まる。第一話で悪知恵の働く少年から密輸業に足を突っ込むチンピラに成長したパブロ・エスコバル。何歳になったのかよくわからないが、テロップで数年が経ったと告知され、エスコバルを演じる役者も変わった。上のメイン画像にも写っているアンドレス・パーラさん38歳。撮影時は33～34歳くらいだがどう見ても小太りのオッサンだ。
　
実際のところ『ナルコス』のヴァグネル・モウラも『エスコバル/楽園の掟』のベニチオ・デル・トロも本物のエスコバルと比べるとカッコよすぎる。口ひげを生やした小太りのオッサン。これこそがエスコバルの真の姿であり、アンドレス・パーラは現時点で“最も似ている”エスコバル役者と言っていいだろう。まあストーリー上ではまだエスコバルは二十歳そこそこのはずで、一話で青年時代を演じた宇梶剛士似の男がもうちょっと演じてくれてもまったく問題なかったとは思うが。
　
で、見た目オッサン、心はやんちゃなエスコバルは従兄弟のゴンサロと銀行強盗にチャレンジ。タバコの横流しから密輸業者の舎弟になっただけでは肥大する野心を満足させられず、さらに犯罪者としてスケールアップしたと言いたいところだが、特に綿密な計画もないただの武装強盗である。それでも銀行に押し入りながら「貧乏人のカネを盗る気はない」と宣言するあたり、後に大衆の支持を得ていく麻薬王の片鱗はある。
　
エスコバルは強盗を成功させて得意顔だが、現場に居合わせた知り合いの八百屋に正体がバレて刑務所送り。しかし刑務所と言っても密輸業の親分と同室にしてもらえたり、ママが牢獄までお弁当を差し入れに訪れたりと随分ユルい。ちなみに一話では美人だったママもすっかり歳をくって貫禄のあるオバチャンになった。一話のメンツが早くも懐かしいが、きっとそのうち見慣れるだろう。
　
結局エスコバルは獄中からゴンサロに通報した八百屋の殺害を指示。ビビったゴンサロは馴染みの娼婦の弟にカネを掴ませて八百屋を暗殺させる。明らかにエスコバルたちが道を踏み外した瞬間だと思うが、釈放されたエスコバルは特に葛藤も見せず、相変わらず友だちの妹を口説いてやがる。悪事とナンパには躊躇のない男、それがエスコバルなのだ。
　
そういえばエスコバルの相棒で従兄弟のゴンサロは『ナルコス』ではグスタヴォに相当するキャラ。グスタヴォは実名だが、こちらのシリーズでは変名にする必要があったのだろうか。こちらもオッサン役者に交替しており、顔に刻まれた皺がシブいのはいいが、やっぱり二十歳そこそこには見えんな。当分は我慢するしかあるまい。
　
そういえば二話の最初のシーンで、エスコバルとゴンサロがきゃっきゃとふざけ合いながらドライブしている。コカインの買い付けにエクアドルに向かう途上であり、この無邪気な2人がコカイン帝国を築いていくと思うと皮肉が効いた演出、、、のはずなのだが正直“ブロマンス”にしか見えない。何を思い出したかって『天国の口、終わりの楽園』のガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナなのだが、ビジュアル的にはただのオッサンコンビなのがたまらない。そういば友人がゴンサロに「彼女はどうした？」とエスコバルについて訊ねるシーンがあり、2人の仲の良さは周囲も公認のようである。
　
ゴンサロだけでなく、本シリーズでは『ナルコス』では描かれなかったエスコバルの兄や弟もエスコバルの悪の構想に巻き込まれていく。兄と弟は地道に町のサイクルショップで小商いに励んでいたのだが、いよいよコカイン売買に手を出すエスコバルの片棒を担がされることに。壮大なファミリービジネスのはじまりである。ただし一話で宝探しに明け暮れていたパパコバルは、息子がコカイン精製工場を買ったとも知らずに「不動産投資か？素晴らしい！」とホクホク顔。パパコバルがいつまで能天気でいられるのか、今後の展開とともに注視していきたいと思う。
　

　
　
　
　
　
※嬉しそうなパパコバル。
　
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