オレンジ・イズ・ニュー・ブラック
NETFLIX
「ブラック=黒」は、ファッションでいうところの定番色で、「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」とは、「オレンジは新しい定番」というような意味だそう。
その名の通り、登場人物はほとんどが常時オレンジ色のファッションに身を包んでる。
だってそれが彼女たちのいる刑務所の定番囚人服だから!
舞台は女子刑務所。主人公パイパー・チャップマンは、10年前に麻薬の売人でレズビアンの元恋人に頼まれて「仕事」を手伝ったことから投獄される。
現在の恋人(男性)とは婚約中、仕事も好調で順風満帆な生活を送っていたパイパーは、一転して地獄の服役生活を送ることに!
劣悪な居住環境はもちろん、理不尽で傲慢な看守のセクハラも日常茶飯事、くせ者だらけの囚人たちには女子校ノリも真っ青な嫌がらせをうけたり(タンポン入りの食事とか…イヤー!)突然偏愛されたりと、毎日てんこもりの試練がパイパーに襲いかかる。
果たしてパイパーは今日を無事に生き延びることが出来るのか?
『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』はパイパー・カーマンによる同名のノンフィクション小説が原作。実体験に基づいているからこそ、予算がない刑務所の現状をはじめ、人種によって生まれる派閥など現在のアメリカ女子刑務所の実態が赤裸々に描かれている。
これは過酷な囚人生活を生き延びながら徐々に逞しくなっていくパイパーのサバイバルドラマであり、個性ありすぎな囚人たちの酷すぎて笑っちゃう日常を描くブラックコメディーであり、刑務所内で再会してしまったレズビアンの元恋人と行きつ戻りつを繰り返す恋愛ドラマでもある。
でも、このドラマが陰湿でバイオレンスでレズビアンエロスないわゆる「女囚モノ」という枠に収まらず、それらすべての要素をはらみながらも大いに笑えてどこか爽快感もあり、時に胸に染みる感動をも抱かせるのは、パイパーの物語と平行して「もうひとつの物語」があるからだ。
「彼女たちはなぜ囚人になったのか?」
毎回フラッシュバックするカタチで、囚人たちひとりひとりの過去が描かれる。
最初こそパイパーの本筋と離れて脇役たちの素性をたどる作業がかったるく感じるかもしれないが、少しこらえて見続けてほしい。これこそがこのドラマの本当の魅力だからだ。
このドラマのキャッチコピー「すべての判決にストーリーがある」という言葉通り、囚人たちはそれぞれに事情を抱えている。
仕切り屋のロシアン・マフィアのような調理場担当の女ボスはなぜ刑務所に入ることになったのか?パイパーにつきまとうあの狂信的なキリスト教信者は?虫も殺せないようなヨガインストラクターは、そして「クレイジー・アイズ」と呼ばれて周りから恐れられるあのイカレタ囚人は…。
素顔を知るうち、それまでパイパーの敵か“景色”に過ぎない「脇役だったはずの」彼女たちにカラフルな個性が浮かび上がってくる。次は誰のドラマが見られるんだろうとワクワクしながら回を重ねるようになり、気がつけば全員に共感している。
彼女たち本来の姿を知り、敵や味方と単純に住み分けしづらくなってからこそ、ドラマが更に面白くなるのだ。
前述の「クレイジー・アイズ」を演じるウゾ・アドゥバは2015年のエミー賞でコメディ部門・助演女優賞を受賞。トランスジェンダーの元男性ソフィア役のラヴァーン・コックスは、タイム誌の『世界で最も影響力のある100人』に選ばれた。
作品賞としてもエミーの常連候補になっている今作は、ジョディ・フォスターも監督として参加するなど話題が尽きない。
女たちが主人公で成功したドラマといえば「セックス・アンド・ザ・シティ」があまりにも有名だけど、「自立した女のオシャレで充実したセクシー・ライフスタイルみたいなドラマ、女って好きだよね」と観たことがない人からはペラッとしたうっすい偏見で返されるのは常。
んもう!!めちゃくちゃ言い返したいけど、映画版の二作目がまさしくそういうペラッペラなやつだったからなんも言えない!!
・・・そんな忸怩たる想いを抱えていた女子、あるいは女子ドラマにそんな偏見を持つ男子にこそ観てほしい「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」。
最初に述べたとおり、全員ホンモノのオレンジかベージュの地味な囚人服を着ているのでファッションには無縁かと思うかも知れないけど、その着こなしは彼女たち同様十人十色で、限られた監獄生活でもしっかりオシャレ、しています。