パブロ・エスコバル - 悪魔に守られた男 エピソード3

村山章の《今日のエスコバル》

第3回:麻薬王のハッピーウェディング

悪名高き“史上最悪の麻薬王”パブロ・エスコバル。『ナルコス』『エスコバル/楽園の掟』など映像作品でもひっぱりだこだが、母国コロンビアがなんと全74話もあるドラマシリーズを作っていた! しかし1日1話ペースでふた月半、週一だったら1年半かかる大ボリュームを一体誰が観るのというのか? オレだ!総尺53時間9分コンプリートへのチャレンジを逐次報告します!

 2016.8.26

全74話もある『パブロ・エスコバル – 悪魔に守られた男』鑑賞レポ。ちゃんと明言してなかったが、不定期連載とはいえなるべく週一で更新する所存です。需要はともかくモタモタしてると永久に終わらないからな! 早くも1週間と2日経ってしまいました。三回目をはじめます。
 
【第三話:はじめての殺人】
 
第三話の内容はズバリ「パブロのウェディング大作戦!」。一話からカマをかけてきたカマトト娘パトリシアとついに駆け落ち結婚である。いや「大作戦!」ってのは嘘ですごめんなさい。駆け落ちするつもりは一切なかったのに、半ば強制的に駆け落ち婚させられてしまいました。
 
調べてみると実際にエスコバルは27歳で当時15歳だった妻と結婚している。劇中でパトリシアの兄貴が何度も「妹に手を出すんじゃねえ!」と怒っていたのも当然だ。にしてもこの時代のコロンビアの貞操観念は相当厳格だったのか、エスコバルがパトリシアを旅行に連れ出すと、パトリシアのお祖母ちゃんが到着先の空港で待ち伏せしていて「なんとふしだらな!もう結婚するしかない!」と凄むのが凄い。
 
ただエスコバルは小娘パトリシアに対して本当にデレデレ状態で、着の身着のまま、ダサいポロシャツ姿のまま喜び勇んで結婚してしまう。「おめでとう」と笑顔で祝福しているパトリシアのお祖母ちゃんにも驚くが、見た目オッサンであるエスコバルがやたらとウキウキしている様は、もう気持ち悪いを越えて素直によかったねと言ってあげたくなるレベルだ。
 
従兄弟のゴンサロや兄のペルーチェを巻き込んだコカインビジネスの方はとりあえず順調のようだが、成型したコカインの塊を「このブツはなんて呼ぶんだ?」「ブツだろ」「じゃあブツでいいか」とか言ってる姿は素晴らしくバカっぽい。それでも“ブツ”をぴったり1kgにして商品管理を徹底するなどビジネスマンとしての才覚は早々に発揮している模様だ。
 
ただ厄介なのがコカインの原料の仕入れ先である隣国エクアドル。どうやら警察に情報がもれていて、検問の警官に毎度毎度ワイロの額を吊り上げられているのだ。チクリ屋を見つけたエスコバルは自らの手で射殺する。このシリーズでエスコバル自身が手を下した初めての殺人なのだが、前回に強盗の目撃者を消せとゴンサロに命じた時と同様、一切の躊躇も悔恨もない。
 
目端が効いて、扱う商品にはこだわりを持ち、邪魔者は確固たる意志で排除する。なるほど、これが強大な麻薬帝国を築き上げるサクセスへの秘訣なのかも知れない。結局エスコバルの「邪魔者を排除する」矛先は国の大統領にまで向けられるのだが、それはずっと後の話。
 
とりあえず今回はオトリ捜査に引っかかってお縄となり、刑務所の暴動に乗じてスタコラ逃げ出して幕。有名な逮捕時の写真を撮られるエピソードも出てくるが、この辺りの状況は『ナルコス』とはだいぶ違っている。
 
いずれにせよ見た目オッサン、まだ若造のエスコバルはすでに刑務所2回、殺人指令1回、直接手を下した殺人1回、脱獄1回。堂々たる札付きの悪党だが、世界7位の大富豪への道のりはまだまだ遠い。そういえばパパコバルは姿を現さず。どこいった?宝探しに森か?
 
escobar3
※カリの教会で結婚式を挙げるエスコバルとパトリシア。二重顎のオッサンと少女。やっぱ犯罪だろ。
 
 
 
 
 
※連載の記事一覧はこちらから
http://www.shortcuts.site/column/todaysescobar

作品データ

製作年:2012

製作国:コロンビア

言語:スペイン語

原題:Pablo Escobar: El Patrón del Mal