ナルコス シーズン2
NETFLIX
ShortCutsの連載「今日のエスコバル」で取り上げているコロンビア産の長大なシリーズとは別の、Netflixオリジナルとして発表されているもうひとつのパブロ・エスコバルの伝記ドラマ『ナルコス』のシーズン2である。ジョゼ・パジーリャは先日「麻薬戦争が続く限り『ナルコス』は続ける」と宣言していたが、今後シーズン3が製作されてもエスコバルが登場することはあり得ない。シーズン2の最終回で、絶対にエスコバルは“死ぬ”からだ。
どうかネタバレと取らないでいただきたい。エスコバルは実在の人物で、1993年12月2日にメデジンで射殺されている(奇しくも前日が44歳の誕生日だった)。シーズン2予告編の売り文句も「Who Killed Pabro?(誰がパブロを殺したか)」。つまりシーズン2は絶対にパブロの死によって幕を閉じるのである。
まず告白すると、筆者はまだシーズン2の第一話しか観ていない。だからこの稿はレビューとして成立しないかも知れない。ただ本シーズンの明快なコンセプトを前に震えと興奮が収まらなくて、ひとりでも多くの人に共有して欲しいと勇み足ながら書くことにした。
シーズン1はパブロの立身出世物語だった。一地方の密売人だった男がコカインビジネスに乗り出し、世界7位の大富豪となり、コロンビアの国会議員に当選し、最高裁判所を焼き尽くし、国家に対するテロ行為を繰り返しながら民衆のカリスマとして上りつめていく。最終回では自分専用の宮殿のような刑務所で暮らしていたがついに追い詰められ、悠々と徒歩で脱獄してみせた。
悪党の中の悪党がわが世の春を謳歌する。それがシーズン1だったならシーズン2は悲壮な転落劇だ。第1話は前シーズンの直後から始まり、まるで1年のブランクなどなかったように物語は進む。しかしパブロの表情に栄華を誇った帝王の余裕はない。まだ莫大なカネも巨大な組織も握ってはいるが、もはや相棒のグスタヴォも逝った。運命の潮目が変わってしまったことはパブロ本人が誰よりも察知しているのだ。
だからこそパブロは巻き返しのためにどんな手段も講じる覚悟を決める。他方では積年の悪逆非道がばらまいた憤怒の種が萌芽し、あらゆる勢力がパブロ殺害に向けて動き出す。現実的な妥協を強いられてきたガビリア大統領がテレビカメラの前でパブロの情報に140万ドルの報奨金を提示し、「いかなる交渉にも応じない!」と宣言するところで第一話は終了。ああ、第一話のネタバレはしてしまったごめんなさい!
しかしパブロの時代より未来に生きている私たちはパブロの余命があと16か月であることを知っている。第1話では大統領が全面戦争を布告した。ライバルのカリ・カルテル、アメリカの麻薬取締局、復讐に燃えた集団ロス・ぺぺス、そして140万ドルを手にする野心に燃えた庶民たち、すべてがパブロの命を狙う状況下で、来るべき最期の日を指を一本ずつ折って数えるような10のエピソード、それが『ナルコス』のシーズン2なのだ。1話1話の重みを感じながら、希代の麻薬王の末路をしかと見届けようと思っている。
シーズン2予告編
『ナルコス』シーズン1、レビュー
※Netflixで配信中
内容・あらすじ
自らが建設した専用の刑務所”カテドラル”からの移送を余儀なくされたパブロは脱獄し、家族のもとに戻ってくる。政府や警察の捜索が厳しくなる中、まだ庶民の支持を失っていないパブロは神出鬼没に暗躍。一方、アメリカ麻薬取締局のマーフィーとペーニャはコロンビア警察のパブロ特別捜索隊に協力を申し出る。