ガーファンクル&オーツのコメディ・スペシャル
NETFLIX
映画『君が生きた証』で、ライブバーで浮気な元カレをディスりまくる歌をウクレレ一本で歌っていた“ピーチズ”という女性を憶えていませんか? そのピーチズを演じていたのがケイト・マイカッチ(ミクーチと表記されることも)。同作の監督を務めたウィリアム・H・メイシーとデュエットしたこともある女優兼ミュージシャンだ。(動画「It’s time to get laid」Kate Miccuci & William H.Macy)
そのマイカッチが女優仲間のリキ・リンドホームと組んでいるフォークデュオが「ガーファンクル&オーツ」。デュオ界の二大“じゃない方”(アート・ガーファンクルとジョン・オーツ)から勝手に名前をもらって活動しているお笑いユニットで、『ガーファンクル&オーツのコメディ・スペシャル』はそんな2人のパフォーマンスがたっぷり詰まった一篇だ。
リキ・リンドホームの仕事で一番有名なのはイーストウッド監督作『ミリオンダラー・ベイビー』の、ヒラリー・スワンクのろくでもない妹役だろう。出番こそ短かったが、典型的なホワイトトラッシュで自分の損得しか考えていないヒール的な役回りを憎々し気に演じていた。端役なので印象に残っている人は少ないだろうが、マイカッチもリンドホームも「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」などドラマシリーズやアニメの声優などで活躍しており、ハリウッドでは息の長い中堅どころである。
で、ギター担当で金髪のリンドホームがガーファンクル、ウクレレ担当で黒髪のマイカッチがオーツ役という割り当てだが、これは特に覚えてなくても大丈夫。ステージ上でもお互いに「リキ」「ケイト」と本名で呼び合っていて「ガーファンクル」も「オーツ」も記号みたいなもの。「ハムレット」のギルデンスターンとローゼンクランツが別にどっちがどっちでもいいのと変わらない。
そんな2人が36歳になって「自分たちのコメディ・スペシャルを作りたい!」と思い立つ。「コメディ・スぺシャル」とは要するに歌ありトークありのの単発お笑い特番のことで、Netflixで観られるクリスマス特番「ビル・マーレイ・クリスマス」も一種の「コメディ・スペシャル」だ。そこで2人は資金集めのためのライブコンサートを開催する、というのが筋書きだが、ほぼガーファンクル&オーツのライブショーだと思ってもらえばいい。
アメリカでは自分たちのテレビシリーズを持っていたくらいの人気者で、Youtubeで検索すると動画もたくさんヒットする2人だが、ちゃんと日本語字幕が付いたのはこれが初めてじゃないか。基本的にコミックデュオなので、早口英語のヒヤリングができなくても内容がわかる字幕が本当にありがたい。
彼女たちの歌の面白さや、芸達者なパフォーマーっぷりはその目で見て耳で聴いていただければお分かりいただけると思うのだが、大半の歌詞が下ネタである。それも「フェラを始めて5分後くらいからの心情を歌います」とか「レズプレイに挑戦した時の衝撃」とかお茶の間では流せないようなものばかり。下ネタではなくとも「妊婦は独りよがり」とディスるネットの悪口みたいな曲まである。
ただ、彼女らが下品な毒舌芸人なわけではまったくなく、それこそ世界中の誰もが感じる女子のあるあるや妬みや嫉みをキュートに歌い上げてみせるのが彼女たちの真骨頂。アブないネタもちゃんと知性のフィルターがかかっているし、36歳という年齢を逆手に取ってガンガン自虐ネタをブッ込んでくるのも上手い。彼女らが才能豊かでやたらと可笑しいことは折り紙付きなので、Netflixに多いアメリカのコメディアンのライブショー番組を観るとっかかりとしても最適ではないでしょうか。
※Netflixで配信中
【予告編】
【視聴リンク】
https://www.netflix.com/title/80136548
内容・あらすじ
女性フォークデュオ「ガーファンクル&オーツ」のリキとケイトの夢は、自分たちのスペシャル番組を作ること。しかしオファーもなければ資金もない。そこで製作費を集めるためにライブショーを企画。ウケればウケるほどカンパが集まるはずとステージに上がるが……。