パブロ・エスコバル - 悪魔に守られた男

村山章の《今日のエスコバル》

「今日のエスコバル」第9回:エスコバル、新たな恋。

悪名高き“史上最悪の麻薬王”パブロ・エスコバル。『ナルコス』『エスコバル/楽園の掟』など映像作品でもひっぱりだこだが、母国コロンビアがなんと全74話もあるドラマシリーズを作っていた! しかし1日1話ペースでふた月半、週一だったら1年半かかる大ボリュームを一体誰が観るのというのか? オレだ!総尺53時間9分コンプリートへのチャレンジを逐次報告します!

 2017.8.16

エスコバル74話全部観る企画。勇ましく開始して一年が経ったのにまだ第九話という体たらく。こんな調子では最終回まであと7年かかる! 遅々として進まないのはつまらないからでも飽きたわけでもなく……って何を書いても言い訳にしかならないので、ペースを上げてがんばります。この連載もShortCutsも二年目もよろしくお願いいたします!
 

【第九話:ご自慢のサファリツアー開催!】

さて、不思議なことが起きた。佳境を迎えつつあった“エスコバル国会議員への道”だが、あっさりと当選してしまったのだ。エスコバルも、エスコバルを引き立てようとしている悪徳政治家のオルティスも、無事に当選したのである。
 
いや、このシリーズは史実をベースにしているから、そりゃエスコバルは当選するに決まっていて、そろそろ当選する頃合いではあったのだ。今回、エスコバルの出馬に乗り気じゃなかったメデジン・カルテルのお仲間も重い腰を上げてエスコバル支援を決めたし、表立っては「スラムのないメデジン」なる慈善団体を立ち上げ、貧困層の支持も取り付けた。あれだけ政界入りに反対した相棒ゴンサロも、なんだかんだで票集めにがんばってくれている。やっぱりゴンサロは頼りになるなあ。
 
とはいえ、ですよ。対立候補との熾烈な選挙バトルとか、本来ならただのゴロツキであるエスコバルが支持を得るための頓智の効いた大逆転とか、当選に向けての盛り上がりを感じないまま、気がつけば当選パーティーをしていたのだ。開票速報みたいなシーンは宿敵ガランにしかなかったし。
 
パーティでは久々にパパコバルの姿を見かけてまだ存命かとホッとしたが、いろいろと前振りが多かっただけに肩すかしされた気分ではある。エスコバルのような輩を議員にしてはならないと、正体を暴くべく奮闘中の新聞社の人たちもいるのだが、彼らの努力が実を結ぶまでにはもう少し待て、ということか。
 
じゃあ今回、エスコバルの何が描かれてるかって、お馴染みの女遊びである。ただし今回の獲物はリオのサンバダンサーのようにはいかない。エスコバル的には高嶺の花。今回が初登場とおぼしきニュースキャスターのレヒーナ、要するに芸能人なのだ! (『ナルコス』でいうところのヴァレリアにあたるキャラですな)
 

やり手風な新愛人、熟女レヒーナ様が降臨

 
自慢の農場で開いた屋外パーティーに客として来ていたレヒーナ。エスコバルがカッコつけてゴンサロに言ったセリフがダメすぎる。
 
「彼女は美しい女性で、洗練されていてあらゆる美点を持っている。しかし若くない。彼女の友人のあのブルネットがいい」
 
どう考えても気になってるのに、違うと言い張る小学生のレベルの言い訳だ。
 
で、首尾よくレヒーナとお友達のブルネットを農場内のサファリツアーに誘うエスコバル。キリンにインパラ、トラ、チンパンジー サイにカバと本格的な動物園状態でレディースはすっかり大喜び、ってこれも小学生レベルだな。エスコバルが実際に私設動物園を持っていたのは有名な話で、ドラマの描写も別に誇張しているわけではないのが凄い。
 
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それでもつれない態度のレヒーナだが、川遊び中に溺れてしまい、エスコバルが助けてあげてなんだかいい雰囲気に。これまた青春ドラマのノリで可愛らしいことこの上ない。パニックに陥ったレヒーナには「驚いただけだ、両手を上げると横隔膜が開いて楽になるよ」と的確なアドバイス。しかしこのドラマを通じて、なぜにエスコバルはこういう実践的な豆知識に通じているのか? 世が世ならクイズ番組に出てもいい線言ったんじゃないかと思わせる、博識で頼れるボスであった。
 
 
イラスト:タカヤマヒサキ(http://hisabon.lolipop.jp/
 
※「パブロ・エスコバル – 悪魔に守られた男」はNetflixで配信中
https://www.netflix.com/title/80035684
 
※連載記事一覧はこちらから
http://www.shortcuts.site/column/todaysescobar

作品データ

製作年:2012年

製作国:コロンビア

言語:スペイン語

原題:Pablo Escobar: El Patrón del Mal