邪悪な天才:ピザ配達人爆死事件の真相
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2011年のアメリカ映画『ピザボーイ 史上最凶のご注文』は、とてつもなく馬鹿馬鹿しい筋立てのコメディだった。宝くじを当てた父親からその賞金をふんだくりたいダメ男とその友人が、殺し屋を雇おうと思い立つ。しかしその計画を実行するには、殺し屋への報酬10万ドルが必要だ。そこで彼らはピザ配達人(ジェシー・アイゼンバーグ)の体に爆弾を装着して脅迫し、自分たちの代わりに銀行を襲わせようとする……。まったくもってナンセンスで現実味の乏しいお話だが、ひょっとするとこの映画は実話をモデルにしていたのかもしれない。しかも実際の事件は、映画で描かれるストーリー展開よりもはるかに恐ろしいのだ!
2003年8月28日、ペンシルベニア州エリーの街で銀行強盗が発生した。それ自体は珍しい事件ではないが、このとき路上で警察に包囲された犯人の様子は明らかに変だった。何とその男は首に取り外し不可能な時限爆弾を装着されていると説明し、「俺は被害者なんだ!」と救いを求めたのだ。困惑した警察は犯人に近づくことができず、爆弾処理班の到着を待つことにするが、そうこうして時間が経過するうちにネックレス爆弾が本当に爆発し、犯人はその場で死亡。そのショッキングな瞬間は、現場に押し寄せたテレビ局のカメラによって全米に生中継された。
この事件は日本のニュース番組でも報じられたし、バラエティ番組でも取り上げられたことがあるので、筆者のように何となく覚えている人は少なくないだろう。Netflixオリジナル作品『邪悪な天才:ピザ配達人爆死事件の真相』は、この事件が犯罪史上いかに特殊なケースであったかを克明に伝えるとともに、その謎だらけの真相に迫る全4回のクライム・ドキュメンタリーだ。
まず、事件の概要を伝える第1回「強盗事件」の内容からして驚きの連続だ。爆死した銀行強盗犯の中年男ブライアン・ウェルズは地元のピザ店の配達人で、事件の直前、森に囲まれた電波塔にピザを届けていた。どうやらブライアンはそこで何者かに爆弾を装着され、強盗を強要された“人質”だった可能性が浮上する。ブライアンを殺したネックレス爆弾はかなり精巧な作りで、爆弾処理班の判断を迷わせるためのギミックまで施されていた。しかもブライアンはその爆弾魔から入念な指示書を授けられており、まるで“宝探し”のようにエリーの街をあちこち駆けずり回らされていた。
本作を鑑賞中に筆者の脳裏をかすめたのは『ピザボーイ』ならぬ、『ソウ』シリーズの天才犯罪者ジグソウだ。第2回以降にクローズアップされる容疑者の名はマージョリー・ディール・アームストロング。第1回の冒頭でも映し出されるこの風貌からして強烈な怪女は、はたしてジグソウのように並外れた知性と狂気を内に秘めた“邪悪の天才”なのか。そこには得体の知れないこの世の闇が渦巻いている。
※Netflixオリジナル作品
『邪悪な天才:ピザ配達人爆死事件の真相』
独占配信中
【予告編】
【視聴リンク】
https://www.netflix.com/jp/title/80158319